十二単と身分による色の違いを知る
十二単は、平安時代の貴族女性が身につけた華やかな衣装として知られています。色使いには、身分や位階を示す意味がありました。
十二単とは平安時代の貴族女性の正装
十二単は、平安時代の宮廷女性が晴れの場などに着用した正式な装いです。実際には十二枚の衣を重ねるのではなく、複数の薄い衣を重ねて着ることから「十二単」と呼ばれています。基本的な構成としては、単(ひとえ)、五衣(いつつぎぬ)、打衣(うちぎぬ)、表着(うわぎ)、唐衣(からぎぬ)、裳(も)、長袴(ながばかま)といった複数の衣が重なり合っています。
この重ね着の美しさは、色とりどりの布が袖口や裾に現れることで楽しめました。当時の貴族女性たちは、衣装の色合わせに細やかな気遣いをし、季節や場面にふさわしい色を選んでいました。そのため、十二単は単なる衣服ではなく、教養や美意識、身分を表現する重要な役割を担っていました。
色と身分の関係が生まれた歴史的背景
平安時代の宮廷社会では、色は単なる好みで選ぶものではなく、厳格な身分制度や儀式の中で決められていました。特に、紫や赤といった色は高位の者しか身につけることができず、色彩の選択がその人の立場を明確に示しました。
こうした色と身分の関係は、中国から伝わった制度や思想の影響を受けています。律令制が敷かれた奈良時代から、さらに平安時代にかけて、衣服の色や模様に細かな決まりが生まれました。これによって、宮廷内での序列や礼儀が可視化され、社会秩序が保たれるようになりました。
十二単の色使いが表す身分や位階
十二単に使われる色には、それぞれ意味が込められていました。たとえば、濃い紫は皇后や皇族など高位の女性だけが着用できました。一方、薄い色や控えめな色合いは、低い位の女性や若い女性に選ばれました。
また、色の重ね方や組み合わせも重要な意味を持っていました。たとえば、鮮やかな緋色の打衣は高位の証であり、五衣の色の配置にも格式が表れました。このように、十二単は単なるファッションではなく、周囲に自分の身分や立場を伝える「言葉」の役割を果たしていました。
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十二単を構成する主な衣装と色の役割
十二単は複数の衣装が重なり合うことで、その美しさや格式を表現しています。それぞれの衣装と色には、はっきりとした役割や意味があります。
単と五衣の色重ねが持つ意味
十二単の一番下に着る単(ひとえ)は、肌に触れるシンプルな衣で、色は控えめなものが用いられていました。その上に重ねる五衣(いつつぎぬ)は、色の組み合わせが重視され、袖口や裾から見える部分で季節感や格調を演出しました。
五衣の重ね順や色合わせには、伝統的な美意識や流行が反映されていました。たとえば、春には淡いピンクや若草色、秋には紅葉を思わせる色を選ぶなど、自然の風景を感じさせる配色が尊ばれました。この五衣の色重ねが、十二単の魅力を大きく引き立てています。
打衣表着唐衣の色彩と身分表現
打衣(うちぎぬ)は、五衣の上に着る厚手の衣で、多くの場合、鮮やかな色や豪華な文様が使われました。高位の女性ほど、赤や紫など目立つ色を選びました。一方、表着(うわぎ)は、十二単の中で最も外側にくる衣の一つで、格式や季節によって色や柄が変化しました。
さらに、その上に重ねる唐衣(からぎぬ)は、現代のストールのように肩に羽織る短い衣です。唐衣は、唐風の美意識を反映した華やかな色彩や刺繍が施され、着用者の身分や行事の格によって選ばれていました。重ねるそれぞれの衣装の色が、宮廷女性の品格や立場を感じさせていました。
裳と長袴に使われる色とその象徴性
裳(も)は、腰から下に巻き付けるスカート状の衣で、表着や唐衣の下に着用します。裳の色や柄は、主に儀式の種類や位階によって決まっていました。赤や紫の裳は高い位の女性が着用し、身分が下がると控えめな色合いが選ばれました。
一方、長袴(ながばかま)は脚を覆うための衣で、動きやすさとともに、裳と同じく身分を示す役割を持っています。袴の色も裳と同じく、位階や行事に合わせて選ばれていました。これらの衣装は、全体の調和を大切にしながら、女性の身分や品格を静かに伝えていました。
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かさね色目と十二単の美学
十二単の色彩美は、単なる布の重ねではなく、「かさね色目」と呼ばれる色の組み合わせによって生まれました。細やかな配色センスが、平安文化の洗練を象徴しています。
かさね色目の種類と組み合わせ
かさね色目とは、衣の表地と裏地の色の組み合わせや、衣を重ねたときに現れる色の調和を指します。たとえば「桜がさね」や「若草がさね」など、自然の情景や植物にたとえた名称が多く使われました。
以下は代表的なかさね色目の一例です。
名称 | 表地の色 | 裏地の色 |
---|---|---|
桜がさね | 薄紅 | 白 |
若草がさね | 黄緑 | 白 |
紅葉がさね | 橙 | 黄 |
このように、かさね色目は季節や行事、着用者の年齢や立場に応じてさまざまな組み合わせが考えられました。
季節や儀式ごとの色選びの工夫
十二単の色合わせは、特に季節感を大切にしていました。春には淡いピンクや緑、夏は涼しげな藍や青、秋は紅葉のような赤や黄色、冬は白や深い青などが好まれています。こうした配色の工夫によって、自然や移ろう季節を衣装の中で表現していました。
また、宮中の大切な儀式や祝い事では、決まった色目が用いられることもありました。儀式の格式や意味を大切にしながら、身分と一体となった華やかな色使いが工夫されてきました。
平安貴族が愛した代表的な配色例
平安貴族の女性たちは、伝統的なかさね色目に加えて、その時代の流行や個人の趣向も取り入れました。たとえば、「藤がさね」は、薄紫と白を重ねたもので、優雅で清楚な印象を与えました。「柳がさね」は淡い緑と黄色の組み合わせで、春の新芽を思わせる爽やかさがありました。
また、「紅梅がさね」や「紅葉がさね」など、自然や季節を感じさせる色目が多く愛用されていました。こうした配色の選択は、着る人の美意識や感性が表れるポイントとなっていたのです。
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現代に伝わる十二単の色と身分の文化
十二単の色使いと身分を表す文化は、現代のさまざまな場面にも受け継がれています。皇室行事や雛人形、体験イベントなどでその美しさを感じることができます。
現在の皇室行事で見られる十二単の色使い
現代の日本でも、重要な皇室行事では十二単が着用されることがあります。たとえば、天皇の即位や結婚の際、皇后や内親王が十二単姿で参列します。こうした場面では、伝統に則った格式ある色使いが守られています。
皇室の十二単は、平安時代の装いを忠実に再現しつつ、現代の感覚にもなじむように工夫されています。色選びや重ね方には、今も昔も変わらぬ日本の美意識が息づいています。
雛人形や現代衣装に受け継がれる色と身分の象徴
雛人形の衣装も、十二単の色遣いや身分表示の文化を受け継いでいます。雛祭りで飾られる女雛(お雛様)は、華やかなかさね色目が特徴で、衣装の色や重ね方に格式や位階が表現されています。
また、現代の和装や結婚式用の衣装でも、十二単の要素が取り入れられています。たとえば、鮮やかな打掛や色鮮やかな帯の使い方などが挙げられます。これにより、十二単の象徴性や美意識が広く現代にも伝えられています。
十二単体験や展示で注目される色彩の魅力
近年では、十二単の着付け体験や衣装展示が人気を集めています。実際に袖を通すことで、複数の色が重なり合う美しさや、細部にこめられた工夫を身近に感じることができます。
体験や展示では、色の組み合わせや衣装の重なり方に注目が集まります。伝統的な色使いを知ることで、日本の美意識や歴史に触れる貴重な機会が得られます。こうした活動を通じて、十二単の色彩文化がより多くの人に伝わっています。
まとめ:十二単の色と身分が紡ぐ日本の美意識と伝統
十二単は、色の選び方や重ね方によって身分や教養、美意識を表現してきました。平安時代から続くその文化は、色彩の美しさや格式を大切にし、現代にまで受け継がれています。
現代の皇室行事や雛人形、体験イベントなどを通じて、私たちは十二単の色と身分をめぐる伝統や美意識に触れることができます。この奥深い文化を知ることで、日本の歴史や美の価値観をより豊かに感じることができるでしょう。
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